コラム 

2005年3月 

 

虹色の赤いバス 

 ロンドンを代表的する赤いダブルデッカー。ロンドン市内をくまなく走る二階建てバス。特にオックスフォードストリートでは赤い電車が走っているかのようにバスが連なっている。最近は安全面を考慮し、どの乗客にも快適に利用してもらえるよう改造された新型バスが益々目につくようになった。それでも観光客の多いロンドン中心では今でも後ろから自由に乗り降りできる旧式バスが活躍している。

 

どのバスも同じように見えるけれど、13番のバスだけは一味違う。赤い旧式バスでもちろん外観は他と全く同じ。ただ13番のバスの運転手やコンダクターは何とも人間味のある人ばかり。

 

最寄り駅が始発なので、最初はさほど乗客で混んではいない。ある日、乗ろうと思ったら、従業員二人が入口に立ったまま通せん坊。不思議に思い顔を見上げると、
『遅いじゃないか!ずっと待っていたんだぞ!』と白髪混じりのコンダクターは怖そうな顔で私に言う。突然何を言うのかと呆然としていたら、もう一方の人が、
『そうだよ、出発したくてもガールフレンドが来るまで出発しちゃいけない、って言うからずっと待っていたんだよ。』とニヤリ。いかめしい表情だったコンダクターも顔をほころばせて笑い出す。
『ごめんね、遅れて。髪を洗ってたの。』と運転手とコンダクターのささやかなジョークに私も対応したら、やっとバスに乗せてくれた。

 

かと思えば、日本人のガールフレンドを持つと言う真面目そうなコンダクターは覚えた日本語をどうしても試したいらしく話しかけて来る。かろうじて聞き取れる日本語で簡単な会話を交わしたかと思ったら突然、
『次ハフィンチリーロード、フィンチロードデゴザイマス。』と日本語で次の停留所を案内。そのあげく、どうだ、と言わんばかりにいたずらっぽくウィンク。皆あの案内でわかったのかなあ?日本語を練習できて嬉しかったのか、バス料金を受け取らずタダ乗りさせてもらった。

 

笑顔いっぱいの黒人コンダクターもいる。切符を徴収するだけでも笑いが耐えない。
『笑っていると、あっという間に時間が経つんだよ。』とまた底抜けに笑い出す。何だか曇り空を吹き飛ばすような壮快な気分にさせてくれ、他の乗客も陽気な表情に変わって行った。

 

底冷えのするある冬の日のこと、切符を出そうとしても手がかじかんで、なかなかカバンから出て来ない。すると、おじいさんのような年輩コンダクターは、
『さぞ寒かったろう』と言いながらガザガザの大きな手で私の手を包み込んでくれた。

 

この人達は皆、同じ白いシャツに紺のズボンという制服を身につけている。にも関わらず、それぞれのキャラクターが生きていて色々なカラーを発揮している。たかがバスに乗っているだけなのに明るい気分にさせてくれる。人のイメージは服装だけでなく、一人一人の個性をどう生かすかが鍵になっている。それをまさに証明してくれる人ばかり。同じ仕事をするなら楽しく。これでこそサービス業に徹していると言うものかもしれない。これでこそ自分らしく生きている人たちなのかもしれない。

 

13番の赤いバスは虹色。少なくとも私にはそう見える。

 

 

ご予約、お問合わせの方は以下までご連絡ください:

Tel/Fax: +44 (0)20 8458 4597

プレス
ニュース
プロフィール
お問合わせ
 
何も言わなくても... ...あなたのイメージは語ります
リンク | サイトマップ | お問合わせ Ó2005-2008, Talking Image, All Rights Reserved